近年需要が高まっているトレーラーハウスですが所有者はまだそれほど多くなく、日本において一般的にはまだあまり普及していない事から、具体的な情報が少ない現状もあります。ここでは、トレーラーハウスの購入を検討している方やコンテナハウスと迷っている方向けに、その違いや特徴を紹介していきます。
INDEX
コンテナハウス
コンテナハウスとは、主に海上用の運送に使われる“コンテナ”を利用して建築されたものです。物流には欠かせないものであり、大型のトラックがそれを輸送している様子も珍しくはありませんので私達の生活にも馴染みのあるものではないでしょうか。
コンテナハウスの基礎知識
先にも述べた通り、元々は重量物を輸送する為に設計されたのがコンテナです。堅牢な鉄骨で出来た箱で、塩害にも強く長期間の使用に耐えられる強度・性能を持っています。アメリカなど海外では「コンテナハウス」ではなくて「カーゴテクチャ」や「アーキテナー」と呼ばれる事もあります。
コンテナハウスの規格
コンテナハウスの基本サイズとしてよく挙げられるのが20フィートや40フィートというサイズです。フィートという単位があまり馴染みのあるものではなくピンとこないかもしれませんが、20フィートでおよそ7.7畳、40フィートでおよそ16.2畳です。
基本サイズがこの2種類であるのは、元々コンテナが海外輸送用の箱である為で、ISO規格に則ったコンテナ輸送可能サイズが20フィートと40フィートに統一されているからです。
また、コンテナは一つ一つがモジュールとなっている為、複数を組み合わせて使う事ができます。コンテナハウスとして建築する際には、いくつかのコンテナを組み合わせる事で、希望の高さやサイズの建築物を作り上げる事が可能です。
※ISO規格とは…国際標準化機構が定めているもので、国際取引がスムーズに行われる為に定められた世界共通基準です。
建築用コンテナ
「コンテナ」そのものは輸送用として使うのが最大の目的であり、その耐久性や頑丈性というのが大きな特徴でありメリットです。ですが「コンテナハウス」として使う場合には、建物用に適した仕様になっているものがメインで製造される事が多いです。
寒冷地でも使う事のできる断熱性の高いものや地震にも耐える事のできる耐震性能に優れているもの、あるいは通常の住宅と同様に省エネルギー性能や再生可能エネルギー設備を搭載しているエコなものなど、その仕様は様々です。
コンテナハウスは、出来上がった箱をそのまま設置してすぐに建物として使う事ができるかと言うとそうではありません。日本では、コンテナハウスは“建築物”としてみなされる為、一般的な住宅建築と同様に建築基準法の規定に沿って建築を進めていく必要があります。その為、土台となる土地はしっかりとした基礎を固めなくてはならず地盤調査や地盤改良が必要なケースもあります。また、設置されるコンテナに使われる鋼材が日本のJIS規格に適合しているかなども建築条件になります。
トレーラーハウス
コンテナと違い、トレーラーハウスはまだあまり馴染みがないという方も多いのではないでしょうか。トレーラーは車、ハウスは家です。車と家それぞれの良い所取りをしたのがトレーラーハウスです。
トレーラーハウスの基礎知識
海外ではモービル・ホームという呼び方でも親しまれている、車輪のついた牽引のできる家の事を言います。牽引ができる、移動ができると言ってもキャンピングカーのように移動しながら暮らす為の設備ではなく、比較的長期的または恒久的に同じ場所に留まる事を想定して設置されます。
日本では東日本大震災の時に被災地の仮設住宅として多く活躍した事で認知度が上がりその利便性の高さなどから注目され需要が高まりました。
トレーラーハウスの規格
トレーラーハウスのサイズは様々ですが、牽引して運ぶ為にクリアするべきなのが道路運送車両法の基準です。この“道路運送車両法”ではトレーラーハウスではなくトレーラ・ハウスと呼ばれていますので情報を検索する際にはその文言に配慮する必要があります。
道路運送車両法で定められたトレーラ・ハウスのサイズ制限は以下の通りです。
- 車幅:2500㎜
- 車高:3800㎜
- 車長:12000㎜
このサイズを超えてしまうと、牽引しての移送ができません。ただし、このサイズを超えるサイズのトレーラーハウスも存在しており、その場合には運輸局に申請を行い基準緩和の認定というものを受ける事で“特殊車両通行許可”というものを取得し、定められた条件下であれば公道を移送する事もできます。
建築基準法上のトレーラーハウス
コンテナハウスと比較すると、一見トレーラーハウスの方が“家っぽさ”がありますし、建築物と判断されそうな印象です。
ですが実は、トレーラーハウスは一定の基準をクリアしていれば建築基準法上の“建築物”には該当しない事と定められています。
- 道路運送法車両法という法規で定められている「自動車」として認められるもの
- “随時かつ任意に移動できる”という条件を阻害するようなベランダや階段、ウッドデッキや柵が設けられてないこと
- “随時かつ任意に移動できる”条件を満たす為に、電気やガス、水道などのライフライン整備においては工具を使用する事のないワンタッチの脱着式な部品や設備を利用すること
- その他、総合的にみたトレーラーハウスの規模や形態あるいは設置状況を判断し、“随時かつ任意に移動できる”こと
これらのような条件をクリアしている事でトレーラーハウスは建築基準法上、“車両を利用した工作物”として扱われます。
また、建築物に該当しない事から、通常であれば建物を建てる事のできない市街化調整区域にも設置できるという特徴もあります。
コンテナハウス・トレーラーハウスのメリット
コンテナハウス・トレーラーハウスにはそれぞれの特徴やメリットがあります。ご自身のニーズに適した選択ができるように、それぞれのメリットを確認してみましょう。
コンテナハウスのメリット
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低コストで建築できる
通常の戸建て住宅を建築する際には数千万円という金額が発生します。ですがコンテナハウスであればそれよりも格段に安く建築する事ができます。内装の仕様やデザインによっても異なりますが、20フィートで100万円前後、40フィートでも100万円台~300万円程がコンテナの相場です、そこに建築費用や地盤改良費がかかっても通常の建築物よりは安価に建てる事が可能です。
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設計の自由が利く
コンテナの基本サイズは20フィートあるいは40フィートですが、新たに注文をする際にはある程度サイズの融通をきかせる事ができます。縦横高さのサイズ比はもちろん、窓や扉の位置や積み上げる階数、塗装の色なども思いのままに選ぶ事ができます。横につなげる、上に重ねるなど色々なデザインや組み合わせでニーズに合わせた使い方ができます。
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工期が短く済む
通常の戸建て住宅を建築する際には短くても2ヶ月~3カ月程の時間がかかります。しかしコンテナハウスは、建築場所で組み立てを行うのではなく、工場で組み立てたコンテナを建築場所に運んで設置する為、工期が短く建築費用も安くなるのが特徴です。
トレーラーハウスのメリット
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初期費用やランニングコストが安く済む
トレーラーハウスは、幅広い価格帯から自分のニーズにマッチしたものを選ぶ事ができます。サイズや内装はもちろん、必要な設備なども選んで購入する事ができ、建築費用はかからず輸送費だけなので初期費用が安価です。また、税制上のメリットも多い為ランニングコストも安く済むメリットがあります。
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税制上のメリットがある
建築物には一般的に不動産取得税や固定資産税が発生します。ですが建築物ではないトレーラーハウスにはこれらの税金がかかりません。
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市街化調整区域にも設置できる
トレーラーハウスは建築基準法上の建築物には該当しません。あくまでも“車両”の扱いになる為、通常であれば建築物を建てる事のできない市街化調整区域にも設置する事ができます。
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一般住宅と変わらない設備
トレーラーハウスでは、一般的な住宅と同様のライフラインを整備します。電気・ガス・給排水については公共の設備を引く事になります。それぞれ、トレーラーハウスの特徴である“迅速かつ適宜移動する事ができる”という条件に適合している必要がある為、ワンタッチで着脱する事のできる方法で設置する事になりますが一般的な住宅と同じようにライフラインを整える事が出来るのは住居や店舗として利用するのには便利です。
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売却の見込みがある
トレーラーハウスは中古市場も非常に需要があります。リフォームが簡単にできる事もそうですし、移動が簡単にできるというメリットも相まって中古物件が出てもすぐに売れてしまう程需要があります。もし手放す事になったとしてもそれなりの金額で売却する事が出来る見込みがあるのはリスクも少なく安心です。
コンテナハウス・トレーラーハウスのデメリット
コンテナハウス・トレーラーハウスそのどちらにも魅力はありますが、注意しておきたいデメリットも把握しておきましょう。
コンテナハウスのデメリット
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設置するまでが大変
コンテナハウスは、おおよそのサイズ規格が決まっていますので設置場所の広さや土地の形などに合わせる事が難しい傾向にあります。
また、地盤をしっかりとメンテナンスしなくてはならないので元々の地盤が弱い場所では地盤改良工事が必要でありこれに大きなお金が発生します。 -
天井が低い
コンテナハウスはある程度のサイズ規格が決まっている事から天井の高さは低くなりがちです。多くのコンテナの規格は高さが2.5mなので、使いたい用途によっては天井の低さがネックになる場合もあります。
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輸送費、運送費が高い
コンテナは、海外の工場で製作して海上輸送で日本に運ばれてくるケースが多くあります。そこから更に設置場所までの運送が必要になりますので、設置場所によっては輸送費・運送費が高額になる可能性があります。国内工場での製造については海外のものと比べるとコンテナそのものが高額になると言われている事から、規格内の既製品が現実的な価格帯になります。
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移動が大変
コンテナハウスは物流でも多く活躍している為簡単に移動ができるようなイメージがありますが、いったん設置してしまったものは簡単には移動できません。移動が必要になる場合にはクレーン車で持ち上げるなどの手間がかかりますし、トレーラーハウスよりも大変と言えます。
トレーラーハウスのデメリット
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運送費用がかかる
トレーラーハウスは、車両の扱いではあるもののエンジンを搭載していないので基本的に自走はできません。その為牽引車両にて設置場所まで牽引して運搬します。工場から遠い程運送費用がかかる事になりますので、購入後の設置費用としてある程度まとまった金額を考慮する必要があります。
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設置場所の市区町村に確認が必要
トレーラーハウスは建築物ではないので市街化調整区域にも設置できるのが特徴です。基本的にはその考え方で良いのですが、市区町村によっては独自の条例を設けているなど、ルールによってはトレーラーハウスに対する厳しい制限を設けている場所もあるようです。
設置を希望する地域の自治体の担当窓口に予め確認しておくと安心です。 -
付属物も建築物にならないような配慮を
トレーラーハウスには様々なオプション設備を付ける事ができます。階段やウッドデッキが人気のあるパーツですが、こういったパーツを付ける場合にも常に“移動する事が出来る”という概念を前提に設置する事が必要になりますので、専門の業者への相談が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。コンテナハウスとトレーラーハウスの違い、それぞれの特徴について紹介してきました。
どのように使いたいかによって欲しいサイズや設備、あるいは設置場所が変わってくると思いますが、やはり近年注目されているトレーラーハウスは幅広い用途に適応する万能設備です。それぞれの実物を見学するなどしてイメージを膨らませるのもオススメですし、長い目で見た時にどのように使っていきたいかという点も考慮して選択できると良いのではないかと思います。