いざという時知っておきたい!自動車の牽引ルールとは?

故障車などの自走できなくなった車両を動かす際や、ボート・トレーラーを引く時などには自動車の「牽引」を行います。

ですが一言で「牽引」と言っても実際には細かいルールが定められており、正しい知識を持って正しい方法で行わなければ法律違反になってしまいます。

ここでは自動車の「牽引」について紹介します。

牽引手順

自動車を自動車に連結して公道を走行する事を「牽引」と言いますが、実際にはどのような手順で牽引を行う必要があるのか見ていきましょう。

状態確認

自動車の牽引を行う際にはまず、牽引したい車両の状態を確認します。故障車を牽引したい場合には、エンジンが動くか、動かないかによって専門の業者に依頼するか否かを判断します。
というのも、エンジンがかからない場合にはハンドルが動かず重たい上、ブレーキもききにくくなります。その為、牽引を行う事で新たな事故を起こしてしまう可能性も高まります。エンジンがかからない場合には、無理せず専門の牽引業者に依頼をしましょう。

牽引準備

接続

牽引車(牽引する車両)と故障車(牽引される側の車両)を牽引用ロープで接続します。車両の前後には必ず牽引フックがついており、車種によって露出しているものもあれば蓋のようなもので隠れており外すと出てくるものもあります。

布の準備

車両を牽引する場合には、“牽引ロープ”を利用します。このロープに、0.3m平方以上の白い布をつけなければなりません。1辺が30㎝以上というとイメージが付きやすいでしょうか。この白い布が付いている事が、牽引している事を知らせる印となり、牽引時の義務として法律で定められています。

ギア操作

牽引される側の車両のギアをニュートラルに入れます。4WD車で2WDを選択できる場合には2WDにしておきましょう。牽引される側にも人が乗車しますが、必ず運転免許を持った人である必要がありますので注意しましょう。

牽引方法

牽引の為の準備が整ったら、牽引車両側にも牽引される側の車両にも運転手が乗りこみ、エンジンをかけます。

牽引車両

牽引する側の車両を運転する場合には、ロープでつながれた5m後方の車両を常に気にかけながら運転する必要があります。急発進、急ブレーキは厳禁ですし、後方車両はロープで接続されているだけなので右左折時の内輪差にも注意しなくてはなりません。後方車両がしっかりと曲がり切れる、角度を考えたコーナリングが必要です。

被牽引車両

牽引される側の車両はギアをニュートラルに入れていますので、基本的にはハンドル及びブレーキ操作のみです。前方車両と繋がれている牽引ロープは、伸縮してしまうと切れやすくなります。このロープをたるませない様、前方車両のブレーキランプやロープの状態を注視しながらブレーキ操作に集中し、牽引されている時の前方車両との距離を一定に保つよう心がけましょう。

制限

牽引を行う際のルールをまとめると以下の通りです。

  • 牽引車両と被牽引車両とを牽引用ロープなどの丈夫なロープで確実につなぐ
  • 車両と車両の間は5m以内を保つ
  • 車両をつなぐロープの中央に、0.3m平方以上の白い布をつける
  • 車両牽引時の法定速度は全ての道路で30㎞/h以下
  • 高速道路の走行は不可

牽引免許

「牽引」というと特別な免許が必要なイメージもありますが、一体どのような車両に免許が必要になるのでしょうか。ここでは、牽引免許が必要となる特別な牽引について確認していきましょう。

故障車の牽引

実は、故障車をロープで牽引する場合には、先に紹介した規定を守って牽引を行えば、牽引免許を持っていなくても問題ありません。もちろん、牽引を行う側の車両の種類に応じた免許を取得している必要はありますが、“牽引をするための免許”は故障車牽引では不要です。

免許が必要な牽引

専用の免許が必要になる「牽引」とは、主にトレーラーの牽引を指します。大型のコンテナをイメージしていただければわかりやすいのではないでしょうか。

荷台となる牽引される側のトレーラー部分を被牽引車と呼びますが、それを牽引する側のエンジンを搭載した運転用車両は「ヘッド」や「牽引車」などと呼ばれます。

運転席と、荷台や客室が分離できる構造になっているものが、「牽引車」と「被牽引車」の関係です。このうち、牽引される側の車両の「車両総重量」が750㎏を超える場合には、牽引免許が必要となります。

トレーラーの他にも、ボートなどを牽引する際にも750㎏以上のものは牽引免許が必要です。

牽引免許取得条件

車両総重量750㎏以上の被牽引車を牽引する為の「牽引免許」の取得条件は以下の通りです。

① 満18歳以上
② 視力が両眼で0.8以上(右眼・左眼各0.5以上)
③ 赤・青・黄色の色の識別ができること
④ 10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえること(補聴器により補われた聴力を含む)
⑤ 深視力検査において2.5mの距離で3回検査を行い、その平均誤差が2㎝以下であること

※深視力とは…物体の遠近感・立体感・奥行・動的な遠近感をとらえる為の目の能力

牽引免許取得方法

牽引免許を取得する為にはいくつか方法があります。

① 運転免許試験場直接受講

いわゆる独学練習で、最終試験場となる運転免許試験場において技能試験を受ける方法です。一発試験のみの費用だけなので免許取得のコストを抑える事が出来る点がメリットですが、合格率は高くありません。

② 自動車教習所

オーソドックスな免許取得方法は、公安員会より指定された公認自動車学校(教習所)に通いながら、決められた時間数の教習を受けた後に卒業検定を受ける方法です。普通自動車免許の取得時とは異なり、学科はありません。
また、教習所が合宿を行っている場合には免許取得合宿に参加する事で、短時間低コストで効率よく免許を取得する事ができます。

独学で一発試験を受ける場合には6000円強で済みますが、教習所に通う場合には10万円前後の費用がかかります。教習所により費用は異なりますが、牽引免許の取得に対応する教習所はそれほど多くはありませんので予め調べておくと安心です。

牽引車両の種類

運送会社をはじめ、物流関係のお仕事の方はトレーラークラスの大きな被牽引車を輸送する為に牽引免許の取得が必須とされる事も少なくありませんが、業務上必要でない場合にも牽引免許を持っている方が良いケースについて紹介します。

ボート

先にも少し紹介しましたが、ボートを牽引したい場合にはその重量によって牽引免許が必要です。基準となる750㎏を超えないクラスはアルミボートで役12~14フィート、バスボートで15~16フィート以下が目安です。それ以上の場合には750㎏を超えるケースが多く、牽引免許が必要です。

トレーラーハウス

近年人気の出てきているトレーラーハウスですが、運送用のトレーラーではなく住居や店舗などに使われるものです。コンテナにタイヤが付いたようなものなので、設置後も牽引により移動が出来る点がメリットですが、重量750㎏以下となると全長4m程度までのサイズ感のものが多いようです。基本的にはトレーラーハウスの販売会社が設置まで対応してくれますが、トレーラーハウスの重さによってはその後の移動時に牽引免許が必要となりますので予め確認が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ここでは、意外とわかりにくい「牽引」の基礎知識について紹介しました。お仕事で必要といった環境でなければなかなか牽引を行うシーンに居合わせる事はないですが、ボートやトレーラーハウスを購入する際、あるいは故障車両を牽引する場合には、牽引の基礎知識を思い出して、定められた法律に則り正しく牽引を行うようにしましょう。